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藤川大樹/文藝春秋
新書 240ページ
私たちのスマホに毎日のように届く詐欺メッセージ――いまや最も身近で危険な犯罪は、特殊詐欺である。
警察庁によると、2025年の特殊詐欺被害額は1200億円以上にものぼり、過去最悪のペースになっている。警察が把握していないケースも含めれば、実際の被害はその数倍にものぼるとの試算もある。詐欺に引っかかってしまった、あるいはその寸前まで行った例が知り合いにいる人も少なくないだろう。では、そうした詐欺の拠点はどこにあるのだろうか?じつは日本から遠く離れた東南アジアのミャンマーが、世界の特殊詐欺のホットスポットになっている。中央政府や国軍の力が及ばない地域に中国系の詐欺集団が拠点を作り、まるで工業団地のようなビル群を建てている。そこに世界各国から若者たちを集め(あるいは誘拐し)、ダークウェブで売買された私たちの個人情報をもとに、詐欺をおこなっているのである。
藤川大樹記者は、英語のほかタイ語、ラオス語もあやつり、ミャンマーの無法地帯に何度も潜入。詐欺団地、違法カジノ、売春窟が立ち並ぶ無法地帯の模様を取材した。本書では、特殊詐欺に従事していた若者たちの生々しい肉声も多数紹介される。そして、なぜミャンマーがこのような無法地帯になってしまったのか?という根本的な原因に迫る。
ミャンマーはもともと中央政府の力が弱く、各地に中国系の軍閥(四大ファミリー)が割拠していた。2021年の国軍クーデターでアウンサンスーチー一派が失脚すると、混乱に拍車がかかった。地方の軍閥や反政府勢力のなかには、武器を買うカネ欲しさに中国系詐欺集団と結託する勢力もあらわれた。そこに中国政府が介入。中国政府は「自国民(中国人)を騙す奴は徹底的に潰すが、日本人などを騙す連中は黙認する」という姿勢で地方軍閥や反政府勢力に臨み、ミャンマーを中国の思うようにあやつろうとしている。
詐欺から透けて見える国際政治の冷酷な現実は、読み応えたっぷりだ。
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